2008/02/06 13:07
セルフ『木蓮を踏む』解説をしたいと思います。
受けなかったギャグを説明する気恥ずかしい状況にそっくりですが、お暇でしたらお付き合いください。
冒頭、久しぶりに父と会うと思うと、『私』はひどく緊張します。
なので、妄想した生産ライン上の自分ズも、みんな不安そうです。
春の曇り空は、そのままナーバスな心情を映します。
枝の木蓮の花は、かつて父へ抱いた純粋な信頼と愛情を示します。
それに、そっと手で触れ、思い出す。
エントランスで父を待つ。緊張はピークに達します。
父との食事。
そもそも、想定した父の性質に、『近しい女と関係を絶つ』があります。
彼は、あまりにも確固とした自己を持つため、他人に対して病的に非寛容なのです。
しかし、自分の異常さには自覚的で、『普通』の人間でいようと努力してきました。
生家では上手くいきませんでしたが、なんとか自分の家庭を築き、子供も育てました。
歳を重ねるごとに、他人と折り合えない性を抑えきれなくなり、家庭との断絶をはかります。
彼にとっては、それが自分に素直に生きることだったのです。
で、歳をとることは、『かくあるべき』自分を失うこと。
『私』は、自分の愛した父は、偽りのものだったと思います。
(実際、父の『私』に対する愛情は本物かもしれませんが、少なくとも『私』はそう感じます)
ロチェスターさんが、とても辻褄の合った読みをして下さいましたが、浮気うんぬんはあんまり念頭にありませんでした。
そして、『私』は木蓮を踏みます。
父への思いの、キレイだった部分を、無理やり踏みにじる。
うららかな春の光の中、自分の心の一部分を殺したのです。
すっかり緊張も切れ、新生活への漠然とした希望を胸に、街を歩きます。
スプリングコートや、歩きよい靴は、消費の楽しさで『私』を満たしています。
父を嫌っても、二万円の嬉しさは変わらない。
上辺の晴れやかさの下に、ドス黒いものを感じて頂けたら、と思います。
掲示板で頂いた、『no name』さんのご感想に、ぎょっとしました。
これ、ほとんど私小説、恋空ですので、『鈍い刃物のような』性が、まんま自分に受け継がれている気がしたからです。
しかし「怖い」というのは、まさに伝えんとした感覚です。小成功。
元々2000字くらいだったのを凝縮したので、『父』の描写が少ない。それが話をぼやけさせ、訳わかんない仕上がりになりました。
長文にお付き合い頂き、ありがとうございました。これからもよろしくお願いします。
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